借金の返済に悩む人にとって、「時効援用(じこうえんよう)」という言葉は聞き慣れないかもしれません。しかし、これは合法的に借金の返済義務を免れることができる制度です。とはいえ、安易に選択すると思わぬデメリットを被る可能性もあります。
この記事では、時効援用のメリットとデメリットを詳しく解説しながら、実際に利用すべきかどうかの判断材料を提供します。
時効援用のメリット・デメリットとは?借金問題を解決するための最終手段そもそも「時効援用」とは?

1.時効援用の基本的な意味
時効援用とは、一定期間が過ぎたことを理由に法律上の権利を行使できなくなる「消滅時効」の制度を利用し、債務の返済義務を免れるために行う法的手続きのことです。
2.借金の時効期間
借金の種類によって消滅時効の期間は異なりますが、一般的には以下の通りです。
借金の種類 | 時効期間 |
---|---|
消費者金融(サラ金) | 5年 |
クレジットカード | 5年 |
銀行ローン | 5年 |
商取引に基づく債権 | 5年または10年(契約内容による) |
※2020年4月1日の民法改正により、改正後に契約した借入は、原則「債権を行使できると知った時から5年、行使できる時から10年」が適用されています。
3.時効援用には「主張」が必要
時効はただ時間が経過するだけで自動的に成立するわけではありません。「時効援用の意思表示(内容証明郵便など)」を債権者に行わなければ、時効は成立しません。これが「援用」と呼ばれる理由です。
時効援用のメリット・デメリットとは?借金問題を解決するための最終手段時効援用のメリット
時効援用を行うことで得られるメリットは少なくありません。以下に主な利点を紹介します。
1.借金の返済義務から解放される
最大のメリットは、返済義務そのものがなくなる点です。これにより、経済的に大きな負担から解放されますので、精神的にも気持ちが落ち着きます。
2.裁判や差し押さえを回避できる
時効援用が成功すれば、債権者は債務者に対して法的措置を取ることができません。つまり、裁判や給与の差し押さえなどから逃れられます。
3.自己破産のようなデメリットが少ない
自己破産は財産の処分が必要な場合や、手続きに時間がかかります。この点、時効援用は早ければ1ヶ月程度で解決できる場合もあるため、5年以上未払いがあるなら、自己破産よりも時効援用を進めた方が早く解決できる可能性があります。また、信用情報に関しても、時効援用の方が解決までの期間が自己破産よりも短くなるため、信用情報の早期の改善に繋がります。なお、債権者がすでに信用情報機関から退会している場合などは、信用情報に影響が生じていない可能性もあります。
4.費用が比較的安い
行政書士や弁護士などの専門家に時効援用を依頼する場合でも、内容証明郵便1通あたり数万円程度の費用で済むことが一般的です。自己破産を依頼する場合は約30万円程の費用がかかることが多いため、自己破産に比べてコストも時間も抑えられるのは大きな利点です。
時効援用のメリット・デメリットとは?借金問題を解決するための最終手段時効援用のデメリット
時効援用には当然ながらデメリットも存在します。軽視して実行すると、後悔するケースもあるため注意が必要です。
1.時効が完成していない場合は逆効果
「時効が完成したと思っていたが、実は途中で時効が更新(中断)していた(例:支払い督促などの裁判を起こされていた)」というケースも多くあります。この場合、時効援用を行ったことで相手方に債権の存在を意識させ、逆に請求や訴訟を起こされるリスクがあります。
2.一部支払いで時効がリセットされる
少額でも支払ってしまうと、「債務を認めた」とされて時効期間がゼロからリスタートします。電話での会話なども証拠とされる可能性があるため、注意が必要です。時効援用をする場合は、債権者に返済や連絡をする前に専門家に相談することが重要です。
時効援用のメリット・デメリットとは?借金問題を解決するための最終手段時効援用をすべきかどうかの判断基準
「時効援用をしても大丈夫か?」「本当に自分にとって得か?」と不安になる方も多いでしょう。以下のような場合には、時効援用が有効な手段となり得ます。
時効援用が有効とされるケース
・借金の最後の支払いから5年以上経過している
・債権者から長期間連絡がない
・債務に心当たりがある
・過去10年以内に裁判を起こされていない
※自力での判断が難しい場合は?
借金の時効は非常に複雑で、時効更新(中断)の事実(督促、裁判、債務承認など)が一つでもあれば時効期間がリセットされます。また、時効援用する際に内容証明郵便を使って債権者へ送付することが一般的ですが、内容証明郵便作成にはさまざまなルールがあります。確実に時効援用を成立させたい場合は、行政書士や弁護士などの専門家へ相談をおすすめします。
時効援用のメリット・デメリットとは?借金問題を解決するための最終手段実際に時効援用を行う方法
以下は時効援用の一般的な流れです。
1.借金の内容と時効成立の可否を確認
o最後の支払い日、債権者名、借入金額などを調査する
2.信用情報(CICやJICC)を取得
o上記1により詳細が分かるなら、取得は不要な場合もあります
o債権者の動向や現在の債務状況を確認する
3.内容証明郵便で援用通知を送付
o相手に対し正式に「時効援用」の意思を示す
4.債権者の反応を確認し、時効援用が成立したかを確認する
o直接連絡して確認が必要な場合もあります
時効援用のメリット・デメリットとは?借金問題を解決するための最終手段まとめ
時効援用は「最後の手段」ではなく「知っておくべき選択肢」
時効援用は、「借金の時効が成立しているかもしれない」という人にとって、非常に有効な救済手段です。ただし、慎重な判断と確実な手続きが求められます。思い込みや曖昧な記憶だけで動いてしまうと、逆に損をするリスクもあります。
借金で悩んでいるなら、一人で抱え込まずに専門家に相談することを強くおすすめします。時効援用が正しく機能すれば、新しい生活をスタートする大きな助けとなるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。この記事が、あなたの人生の再出発に少しでも役立てば幸いです。
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